飛び立つハクトウワシ

キーナイ・フィヨルド国立公園 アラスカ 2010

5 x 7 in / 12.7 x 17.8 cm / Open Edition
8.5 x 11 in / 21.6 x 27.9 cm / Open Edition
13 x 19 in / 33 x 48.3 cm / Limited Edition / Edition of 30
16 x 24 in / 40.6 x 61 cm / Limited Edition / Edition of 30
20 x 30 in / 50.8 x 76 cm / Limited Edition / Edition of 15
32 x 48 in / 81.3 x 122 cm / Limited Edition / Edition of 5


 トウヒの木にとまり、ハクトウワシが羽を休めている。僕はそっと近づいていき、五十メートルほどの位置を取った。僕を気にかける素振りもなく、じっと湖を見つめるハクトウワシ。遠くから見たときには休んでいるのかと思ったが、どうやら湖にいる何かを狙っているようだ。

 空気が鋭く冷たい。外気温はマイナス十五度くらいだろうか、手がすぐにかじかむ。体を動かしていないと固まってしまいそうになる。そんな雑念が僕を取り巻いていた。しかし、その先にいるハクトウワシは、この空気の冷たさを何も気にしていないように見えた。食べること、すなわち生きることへの執念は、最優先のこと以外をすべて振り払う。その意味で、僕が狙う写真への執念はこのとき、ハクトウワシの意志の力には到底及ばなかった。

 飛び立つ方角へ頭を向け、掴んでいた枝から足を離す。狙っていた獲物は既に視界から消えていたのだろうか。ハクトウワシは、指先のように広がった風切羽を大きく優雅に伸ばし、霧のかかる海へと姿を消していった。

 白い雪を乗せた黒いトウヒの木と、頭が白く体の黒いハクトウワシとの対比が、極寒の地の象徴となって、僕の記憶の中に深くしまい込まれた。

中島たかし「北の大地アラスカ」(写真展)より抜粋

 
 

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